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私の中学、高校時代からの親友に柾木高(まさきたかし)という絵かきがいる。
彼は美大を卒業後、中学の美術教師に一旦は就いたが数年で退職、プロの画家の道を進んだ。
彼は国展等、何度も入選し、洋画家として美術年鑑にも掲載される程に成功した。 しかし、実際の生活は苦しく、百貨店で個展をしても取り分は画商が3割、百貨店が4割、本人は3割弱と厳しいものだ。
個展を開いても売れる時もあれば売れない時もある。
しかし、私は彼の絵が好きだ。 彼は今でも50ccの原付バイクでどこにでも絵の取材に出掛けてゆく。
時には2週間も3週間も野宿をし、自分が得心できる自然と巡り合うまで旅を続ける。
冬の寒い朝、4時5時に待機し、山の頂から朝日が昇るのを待つ。
彼の研ぎすまされた感性が、そのわずかな瞬間に勝負をかける。
そんな時、描いた彼の絵は少なくとも私にとっては他のどんな絵よりもすばらしく輝いて見える。
私の楽しみは彼が個展を開催するたびに彼の進化を見い出すことだ。
ひょっとしたら彼の奥さんか私にしかわからないであろう微妙な変化だ。
彼の中には損得勘定は一切ない。
きわめて高い芸術性の追求のみである。
というのも個展で売買する絵ではなく、展覧会へ出品する彼の絵にはいつも圧倒される。
深層心理の爆発である。
深くて深くてとてもはかり知りうるものではない。
いつもその時点でこいつにはとてもかなわんなと思うのである。
芸術家としての考え方からであろうが、携帯電話すら持っていない彼の清貧とも思える生き方に日常の「行(ぎょう)」の大切さを思うのである。
現在、河村会計にある絵はすべて彼の描いたものである。
代表
河村 貴雄