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自己重要感

人間の欲求の一つに自己重要感がある。

 

「重要人物たらんとする欲求」である。

 

いつも自分のことを他人から認めてもらいたい。

 

自分の存在をわかってほしいと思う心である。

 

ある歯科医は毎日、数十名の患者さんを看る。

 

その日、患者さんと交わした会話のポイントだけを簡潔にまとめバックヤードに置いてあるノートに記しておく。

 

10日後に再来院した患者の治療を始める前にバックヤードのノートを見て先日の会話の内容を思い出し「○○さん、こんにちは。ところで先日、お話を伺った大学に合格されたお孫さんは元気に通われていますか?」 と話しかける。

 

その先生の一言を聞いた途端「先生は10日前にちょっとお話しただけなのに、ちゃんと覚えて下さっているよ」とその患者の自己重要感が一気に高まってゆく。

 

患者の家から医院まで本当は遠いのだが、また来院しようという気になったのは云うまでもない。

 

現在、その歯科医院はドクターが何人もいてとても繁栄している。

 

ホテルや旅館で受けるホスピタリティー(厚遇・おもてなしの心)はお客様の自己重要感を高める最たるものである。

 

日常生活の中でもちょっとした先手の挨拶や相手の名前を呼ぶこともまた通常なら見過ごすかもしれないくらいの長所を、さらりと云ってあげることも相手の重要感が高まるのである。

 

反対に関心を示さなかったり、無視されると本当につらいものである。

 

人を動かす秘訣は自ら動きたくなる気持ちを起こさせること。

 

それが自己重要感であり、自己の重要感に対する欲求は人間を動物から区別している主たる人間の特性の一つでもある。

 

代表

河村 貴雄