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小生が車を初めて所有したのは27才の時であった。
当時、薄給の身であったのでとても車を購入する余裕などなかった。
ある時、友人より製造から20年程経過した廃車寸前の車を譲ってもらった。
数ヶ月間、車検が残っていたので、その間大切に乗ろうと心に決めた。
まずコンパウンドで磨き上げ、ワックスをかけ古いながらもピカピカにして乗った。
数ヶ月後、私に無償で譲ってくれた友人が「この車、本当に以前、俺が所有していた車?」と驚いたのを今でも覚えている。
その後、安価な中古車を購入することができた。
以前と同じように大切に可愛がった。
乗るたびに車に式をとって乗った。
「今から乗せて頂きます。どうぞ事故など起きませぬようよろしくお願い致します」と。
時も経過し、生活にゆとりが持てるようになり車も欲しいものを購入することができるようになったが、物に対する気持ちは若い頃より一段と深くなった。
只今、所有している物に心から感謝し、大切に扱い、さらに生かして使うことを心がけていると不思議と物に恵まれてゆく。
特に道具や器械は働く人にとって手足の延長である。
腕のいい職人は道具を我が子のように大切にし、創意工夫をほどこし魂を吹き込む。
優秀な製造スタッフは器械のすみずみまでの手入れを怠ることはない。
一流であればある程、その取り組みは徹底している。
物も人と同じように縁があって私達のもとにある。
ある面、天与の物であり、天からの預り物である。
物には使う人の心がしっかりと反映する。
物がいい働きをするかどうかはその人の考え方や扱い方にかかっている。
何故なら物はすべて生きているからである。
河村 貴雄