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真心のハガキ

私が平成元年から7年までコンサルティングをさせて頂いた葬儀社がある。

 

昭和60年の創業で、開業資金もなく、まさにゼロからのスタートであった。

 

私が関与を始めた時はまだ年商も僅かであった。

 

しかし、A社長の気くばりは一流であった。

 

どうすればお客様に好かれるのかをいつも徹底的に考えていた。

 

A社長が実践したことの一つに真心のハガキがある。

 

名刺交換した人には全てもれなくハガキを出した。

 

内容も通りいっぺんではなく、それぞれの人に合った文面を考えて送った。

 

とても面倒くさいことだがA社長はそれをやり続けた。

 

ある時、保険会社のセールスレディーの訪問を受けた。

 

その時点で保険に加入したわけではなかったが、その彼女とも名刺交換をしていたので、いつものようにハガキを出した。

 

ところが、これまでセールスに行った先のお客様からハガキなど一度も頂いたことがなかった彼女は大いに感激した。

 

その一ヶ月後、彼女の母親が亡くなり、葬儀の一切をA社長の葬儀社にお願いしたいという連絡が入った。

 

もしハガキが届かなければA社長のことは思い浮かばず、近くの葬儀社に依頼していたかもしれない。

 

メールが多い現在でもハガキには独特の味わいがある。

 

その後もA社長は真心のハガキを継続している。

 

誰でもこれくらいのことは実行したらよいことは知っている。

 

しかし、よいとわかっていることであってもやり続けなければ信用は得られないし、結果もついてこない。

 

100%例外なく実践するところに意味がある。

 

今、A社長の葬儀社は年商40億を超えている。

 

人と人との係わりが薄くなった今日だからこそ、相手のことを思いやり、手間のかかることを続けてゆくことが大切なのかもしれない。

 

河村 貴雄