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ある東京の製造メーカーが大きな注文が取れそうになり営業もツメの段階に来ていた。
ところが工場では既に生産工程がぎっしりつまっていて、指定の期日までに納入する目どがたたなかった。
新規の注文に対してとても納期が守れそうもない。
受注は到底無理ではと思われた。
そこで取締役工場長は部下に強制的に突貫作業をさせるのではなく、まず全員にいきさつを説明する方法を選択した。
この受注分が無事納入できたら社員にとっても会社にとっても非常に意義があることを熱心に説いた。
次に部下達に質問をした。
「受注して納期に間に合わせるにはどうしたらいいのか?」「人員配置や作業時間をどう調整すればいいのか?」何と、部下達は次々とアイデアを出し、会社はこの注文を引き受けるべきだと進言した。
結果、社員達の一丸となった働きが納期をみごとに守った。
私が常日頃から尊敬しているA社長は誰に対しても「あれをしろ」「こうしろ」と命令的なことを言わない。
「こう考えたらどうだろう」「これでうまくゆくだろうか」と言っていた。
またA社長は必ず相手の目をみてうなずき、できるだけ部下に話をさせるようにしていた。
さらに部下との会話で、決して否定的なことは言わなかった。
「それはなかなかいい考えだ」「きみの話は面白いな」「そういう考え方もありだな」と感心した様子を示した。
決して命令はせず自主的にやらせて失敗によって学ばせた。
命令を質問のかたちにすると部下は気持ちよく受け入れるばかりか、創造性を発揮し、積極的に様々な提案もしてくるようになった。
その効果もあり、業績は飛躍的に向上した。部下の潜在能力を限りなく引き出すコツはこのあたりにあると思われる。
河村 貴雄